浜松市が打ち出した水道事業の民営化計画を阻止しようと労働組合と市民運動が連携し、「命の水を守れ」ととりくみを広げています。これに押され、浜松市長は「当面延期」を表明しました。自治労連(日本自治体労働組合総連合)傘下の浜松市職員組合と浜松市職員上下水道労働組合は、「断念」まで追い込むため、市民とともに「公的サービスの産業化を許さない」と春闘をたたかっています。(唐沢俊治)
浜松市で10日、「水道民営化は誰のため?」と題し講演会が開かれました。会場の参加者が「水は市がしっかり責任を持つべきだ。放棄は許されない」と意見表明。市内を「公営でいいじゃないか」と声を合わせデモ行進しました。
水道事業は昨年12月の水道法改定によって、自治体が施設の所有権を持ったまま運営権を民間企業に売却し、もうけさせるコンセッション方式での 水道事業は昨年12月の水道法改定によって、自治体が施設の所有権を持ったまま運営権を民間企業に売却し、もうけさせるコンセッション方式での民営化が可能となりました。
こうした動きに追随してきたのが浜松市です。昨年から下水道事業の一部を全国で初めて同方式により民営化。さらに、水道事業でも民営化計画を示していました。その理由として、老朽施設の更新費用、人口減による料金収入の減少などを挙げ、民営化による経営改善を主張しました。
市民ネット結成
しかし、民営化されれば利益が優先されサービス低下を招くのは必至。料金の値上げや安全性、災害時の対応など大きな不安が広がりました。世界的には民営化後、料金高騰や水質悪化により再び公営化が相次いでいるからです。
幅広い市民らが昨年6月、「浜松市の水道民営化を考えるネットワーク」を結成。水道事業の民営化計画をやめ公営で発展させるよう求める署名や宣伝にとりくんできました。署名は約1万2000人分を提出。学習会や公開質問などを通じ、水道事業は年約10億円の黒字となっており、民営化に根拠も必要性もないことが次々と明らかになりました。
「民営化により住民生活が脅かされることに、黙ってはいられません。水道職員が分限免職の危機にさらされ、結局、住民サービスの後退につながります」。浜松市職員組合の良知信一執行委員長が言います。
自治労連の“地域住民の繁栄なくして自治体労働者の幸福はない”という立場で、命の水を守る運動に参加してきました。
断念させるまで
鈴木康友市長は今年1月末、「市民の理解が進んでいない」として当面延期すると発表。「凍結、断念ではない」と述べました。
同市民ネットワークの池谷たか子事務局長は、「市民の反対世論で、市を追い込んだことは重要です。白紙撤回、断念させるまで運動を続けます」と強調します。
「民営化で職員がいなくなれば、災害時などに市民が困る。水道の労働者を守ることが、市民の生活を守ることにもつながります」と指摘。「民営化はだめだという圧倒的な世論をつくるため、市民が公務労働者とも力を合わせ、運動を一緒に広げたい」と意気込みます。
浜松市職員上下水道労組の三岡昭弘執行委員長は、「清浄で低廉な水道は、生存権であり、大企業のもうけのための商品ではない」と訴えます。
「水道事業は、民間企業による利益追求ではなく、公の責任で市民の暮らしを守るというのが基本です。これまでの経験や専門技術の蓄積は、簡単に民間企業に継承できるものではない」といいます。
「市民とともに民営化の反対運動を大きく広げ、その中で組合員も増やし、住民サービスを守っていく春闘にしたい」と力を込めました。(『しんぶん赤旗』2月21日付)