来日中のローマ・カトリック教会のフランシスコ教皇は24日、人類史上2番目に原子爆弾が投下された長崎市を訪れ、爆心地公園で、「核兵器についてのメッセージ」を読み上げました。禁止条約を含めた核兵器廃絶への決意を表明。世界の政治指導者にむけて、「核兵器は、国家の、安全保障への脅威からわたしたちを守ってくれるものではない、そう心に刻んでください」と訴えました。教皇は広島市に移動し、平和記念公園でメッセージを発表しました。
ローマ教皇の長崎訪問は、故ヨハネ・パウロ2世以来38年ぶり。降りしきる雨の中、スペイン語でメッセージを読み上げた教皇は、長崎を「核兵器が人道的にも環境にも悲劇的な結末をもたらすことの証人である町です」と表現。武器の製造、改良、維持などに財が費やされ、「日ごと武器は、いっそう破壊的になっています。これらは途方もないテロ行為です」と断じました。
「核兵器から解放された平和な世界を、数え切れないほどの人が熱望している。それを実現するには、すべての人の参加が必要」と強調。「核兵器の脅威に対しては、一致団結して応じなければなりません」と呼びかけました。
「カトリック教会としては、人々と国家間の平和の実現に向けて不退転の決意を固めています」として、「核兵器禁止条約を含め、核軍縮と核不拡散に関する主要な国際的な法的原則にのっとり、飽くことなく、迅速に行動し、訴えていくことでしょう」と語りました。
教皇のかたわらには、原爆投下後の長崎で撮影されたとされる「焼き場に立つ少年」の写真パネルが掲示されました。爆心地公園には、知事、市長、被爆者やカトリック信者、子どもたちなど約1000人が集まり教皇を出迎えました。教皇は、被爆者の深堀繁美さん(88)と下平作江さん(84)から花束を受け取り、原爆死没者18万2601人分の名前が納められている原子爆弾落下中心地碑に献花し、祈りをささげました。
教皇が「各国が互いに信頼関係を築くべきだ」とのべたことに注目したのは日本原水爆被害者団体協議会の田中熙巳(てるみ)代表委員(87)。「信頼関係を各国が積み重ねることで世界平和や核兵器廃絶につながる」と訴えました。