2019年度に日本政府が計上した在日米軍関係経費の総額が7902億円となりました。初めて8000億円を突破した昨年度に次ぎます(グラフ)。防衛省など関係省庁の資料を本紙が集計し、計算したものです。こうした経費負担は、米国の他の同盟国と比べて突出しており、米軍にとって世界一、居心地のよい国にしています。
米軍の特権を定めた日米地位協定24条では、日本側の米軍駐留経費負担を定めています。しかし、具体的に明記されているのは土地の賃料などに限られています。米軍関係経費のうち約5割にあたる3914億円((1)在日米軍駐留経費=思いやり予算1979億円(2)在日米軍再編経費1679億円(3)SACO経費256億円)は、地位協定上も支払う義務がありません。
とりわけ、安倍政権発足後、沖縄県名護市辺野古で県民の民意を無視した米軍新基地建設を強行。米軍再編経費を大幅に引き上げています。沖縄県は、総工費を2兆5500億円と試算しており、今後、さらなる膨張の危険があります。
また、日本政府は基地従業員の給与や米兵の住宅・娯楽施設、水光熱費などを盛り込んだ「思いやり予算」について、年間2000億円規模を維持していますが、トランプ米政権は強い不満を表明。4・5倍増を要求したとの報道もあります。
現行の「思いやり予算」特別協定が21年3月に期限を迎えるため、年明けから延長協議が本格化します。米側から厳しい要求が出されるのは確実です。
福岡空港の基地移転費 国交省が計上
隠れ支出も
在日米軍関係経費は防衛省、総務省、厚労省、財務省が継続的に支出していますが、これ以外の省庁が負担する場合もあります。福岡空港(福岡市)では滑走路増設に伴い、空港内の米軍専用区域の移設工事費を国土交通省が計上していることが分かりました。
福岡空港は戦後、米軍が接収して米軍板付基地になりました。1972年4月に大部分が返還されましたが、倉庫1棟などが残っています。日米両政府は2016年3月の日米合同委員会で、米軍専用区域を空港内の別の場所に移設することで合意。国交省大阪航空局によれば、総工費は約30億円で、来年3月に完成する予定です。
これ以外にも、沖縄県伊江村での地下ダム建設に伴い、15年度、農林水産省の予算で在沖縄海兵隊基地を移転(総工費約15億円)。長崎県佐世保市では07年度、道路建設に伴い、国交省の「道路特定財源」約28億円で米海軍将校住宅が建設されています。
隠された米軍向け支出は、さらに存在する可能性もあります。日本はまさに「米軍奉仕国家」です。