日本共産党の志位和夫委員長と安倍晋三首相の4日の会談の詳報は次の通りです。
特措法
志位「政府の立法事由はなくなった。断念すべきだ」
安倍首相 新型インフルエンザ等対策特別措置法の一部を改正し、法の対象に「新型コロナウイルス感染症」を追加したい。ご協力をお願いしたい。
志位委員長 政府は、「新型インフルエンザ特措法は、新型コロナウイルスには適用できない。だから法改正が必要だ」といってきた。ところが、政府はすでに、新型インフルエンザ特措法にもとづく措置を新型コロナ対策に適用していたということが、今日の参院の審議で明らかになった。法改正が必要だという政府の立法事由がなくなったということだ。したがって法改正は断念すべきだ。
首相 特措法については、参院で問題になった件はマスクの供給についての措置だが、これは予算要項の変更で対応した問題であり、法律にかかわる問題ではない。
志位 それは成り立たない。なぜなら、「新型インフルエンザ等対策政府行動計画」の具体化として行われている。「行動計画」のもとになる法律は何か。
首相 新型インフルの特措法だ。
志位 根拠法は新型インフル特措法だと認めた。それを実際には新型コロナにも適用しているわけだから、政府の言い分は成り立たない。
わが党は、2012年の新型インフルエンザ特措法に対して、人権制限の歯止めがあいまいだとして反対した。ただ、今問われているのはそれ以前の問題であり、立法事由がなくなったものは撤回すべきだ。
専門的知見の尊重
志位「専門家の科学的知見を尊重するうえで問題があった」
首相「今後は『問題があった』と指摘を受けることのないようにしていきたい」
志位 新型コロナウイルス対策は、与野党の枠をこえて協力してとりくむべき重大な課題だ。そういうとりくみにしていくうえでも、首相の対応の基本姿勢について、改めていただきたい問題点がある。3点ほど、率直にのべたい。
第一に、専門家の科学的知見を尊重する点で、問題があるのではないか。
総理は、今回の全国一律の休校要請を行うさいに、専門家会議の意見を聞いていなかった。専門家の知見を踏まえない「政治決断」では、国民の理解を得ることはできないし、ウイルスとのたたかいに勝つことはできない。こうした姿勢は即刻改めるべきだ。
首相 この1、2週間が瀬戸際だと言うことでああいう対応をした。しかし、今後は専門家の方々の知見を尊重するという提起はその通りだと思う。それで、尊重する点で「問題があった」という指摘をうけることがないようにしていきたい。
現場への信頼
志位「現場で頑張っている方々を信頼する点で問題がある」
首相「自治体の方々の判断を尊重していくということはその通りだ」
志位 第二に、現場で頑張っている方々を信頼する点で、問題があるのではないか。
それは全国一律の休校要請に端的にあらわれた。
感染拡大を防ぐために休校の措置を行うことはありうることだ。しかし、それは現場の教職員、教育委員会、自治体などが、自ら判断し、負担をかける親たちにも協力を求める。こういう手順で進められるべきではないか。政府の役割は、そうした判断に資するガイドラインをつくり、現場が決めたら全力で支援する。ここにあるのではないか。
首相がいきなり一律の要請をするのは現場で頑張っている方々の判断力を信頼していない態度ではないか。ここも改めていただきたい。
首相 現場の方々への信頼という点では、現場での自治体の方々の判断を尊重していくということはその通りだ。今後は、(志位氏の)提起も踏まえ、対応していきたい。
党首会談
志位「重要な判断のさいに一切の相談がないのは問題だ。10日の緊急対応案を決める前に再度の党首会談を」
首相「考えたい」
志位 第三に、国会に相談してことを進める点でも、問題があるのではないか。
これまで国民の生命と安全にかかわる重大事態に直面したとき、政府が国会を構成する政党・会派の意見を、党首会談などの形でくみあげて、事態にあたることは、当然のように行われてきた。
私自身の体験でも、2011年の東日本大震災のさいには、党首会談が何度も行われた。2002年の日朝平壌宣言のさいにも、さらに1996~97年のペルー人質事件のさいにも、党首会談が行われ、与野党をこえて対応を話し合ってきた。
ところが今回の事態にさいして、全国一律の休校要請という国民生活に重大な影響を与える要請を行うさいにも、一切の相談がされなかった。この姿勢も改めていただきたい。
この点にかかわって、具体的要請がある。政府は3月10日ごろまでに第2弾の緊急対応策を決めるとしている。方針を決める前に再度、党首会談をもち、各党・会派の具体的提案を聞いていただき、それを政府方針に反映させていただきたい。
首相 これまであまり党首会談がやられてこなかった。(第2弾の緊急対策がやられる前の党首会談は)考えたい。