日本共産党の小池晃書記局長は3日のNHK「日曜討論」で、新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言の延長や、感染拡大に対して求められる支援策や憲法のあり方について各党幹事長らと討論しました。
宣言延長
緊急事態宣言の延長について、自民党の稲田朋美幹事長代行は「評価したい」と述べ、1次補正を、「世界でも最大規模」だと不十分な中身を誇って見せました。
小池氏は「感染の広がりも医療体制の逼迫(ひっぱく)も深刻であり、延長はやむを得ない」と発言。同時に、「私たちは自粛要請と補償はセットだと言っていた。補償なき緊急事態宣言では命を守れないと主張してきた。延長するなら、ますますそれが大事になる」と強調しました。
さらに、補正予算の医療体制強化の予算は1490億円で、これでは医療崩壊は止まらないと述べ、「2次補正を急ぎ、医療崩壊を止める手だてを」と要求しました。
また、専門家会議の委員が感染者は氷山の一角で実際は10倍と述べるなど、感染実態を正確に把握できない状況だと指摘し、「PCR検査を抜本的に増やし、抗体検査も併用して正確な実態を把握しなければ、正しい政策は出せない。全力を挙げた取り組みを求めたい」と主張しました。
立憲民主党の福山哲郎幹事長は「自粛と補償はセット。医療への抜本的拡充を含んだ次の補正に今すぐ取り組むべきだ」と主張。国民民主党の平野博文幹事長も宣言延長は「やむを得ない」と述べつつ、「政府は行動変容ができていないと国民に(責任)転嫁している。支援がなければ、延長はない」と訴えました。
経済対策
宣言延長でさらに打撃を受ける経済への対策について、自民・稲田氏は政府の対策メニューをあれこれ紹介しました。
小池氏は「稲田さんの言っていることは、2週間前に聞いたこととほとんど同じだ。本気でやらなければダメだ」と批判。「今の対策では不十分なのだから、暮らしと営業、医療のためにも、急いで十分な額の2次補正予算を」と強調しました。
また、1次補正の審議で、中小業者向けの給付金を売り上げ半減以上の業者に限る根拠を政府が答えられなかったことを指摘。「根拠ない線引きで業者を切り捨てることはやめ、安心して感染防止にとりくめる補償をやる。今度こそ、働く人、正規も非正規も、収入の8割補償をやるべきだ」と求めました。
休業業者への家賃支援がテーマとなり、小池氏は、家賃支援法案を野党がすでに提出していることを紹介する一方、番組前半で西村康稔経済再生担当相がこの問題で「何ができるか考える」と発言していたことを批判。「何をやっているのか。すぐに政府・与党は答えを出すべきだ」と訴えました。
学生支援
学校教育の課題や9月入学の検討が議論になりました。小池氏は、9月入学は社会全体に影響があり、コロナ危機の最中に国民的議論ができるのかと指摘。「いま大事なことは、目の前の子どもたちの教育権を保障し、心身のケアに心を砕くことだ」と話しました。
また、学生の5人に1人が退学を検討するという調査もあるなか、1次補正の授業料減免は7億円しかなく、あしなが育英会の10億円よりも少ないと指摘。「コロナのせいで勉学を諦める学生を絶対に出さないのが政治の責任だ」と述べ、野党が協議している学生支援法案の実現を呼びかけました。
特措法改定
自民・稲田氏は、改定インフルエンザ特別措置法にもとづく休業要請に従わない業者への罰則などを盛り込む同法の再改定に言及しました。
小池氏は「感染の拡大を食い止めるためには一定の行動制限は必要だが、その際もできるだけ抑制的であるべきだ」と強調。何より正確な情報にもとづく国民の理解と協力を得ることだと語りました。
その上で、「特措法の最大の問題は補償の考え方がないことだ」と述べ、「国民の理解と協力を得るために必要なのは十分な補償であって、補償なき私権制限は犠牲と混乱を生むだけだ」と批判しました。
国民・平野氏も「要請に応じないのは、裏付けの補償がセットにないからだ」と指摘。立民・福山氏も「制度よりまず足元だ」と現場の自治体に権限と財源を渡すことを急ぐべきだと求めました。
憲法改定
憲法記念日にあたり、コロナ感染の中での憲法のあり方が議論になりました。
自民・稲田氏は、NHK世論調査で「憲法改正が必要」が32%になったことなどを挙げるとともに、緊急対応の私権制限の問題にからめて憲法審査会での改憲論議を求めました。
これに対し、小池氏は、同じ世論調査で「憲法以外の問題を優先して取り組むべきだ」が78%であることを紹介し、「国民はいまの改憲を望んでいない」と反論。「コロナ対応がうまくいっていないのは憲法のせいではない。安倍政権の政治姿勢と能力の問題だ」と述べ、「コロナ危機のいまこそ、憲法を生かした政治を実現することが政治の責任だ」と述べました。
立民・福山氏は「立憲主義にもとづいてコロナに対応すべきだ。コロナに乗じて憲法改正の議論をすることはやめてほしい」と発言。国民・平野氏も改憲論議を「いますべきなのか疑問だ。コロナ最優先で国民の命を守ることが憲法の負託に応えることになる」と述べました。
政治の役割
最後に、いま政治が果たす役割を各党が発言しました。
小池氏は、補正予算で観光キャンペーンなどに1兆7000億円が盛り込まれる一方、医療や検査の支援はその10分の1以下であることなどを指摘し、「税金の使い方の優先順位が完全に間違っている」「従来型の政治を見直すときだ」と強調しました。
そして、ILO(国際労働機関)のガイ・ライダー事務局長が、今後の課題として「パンデミックが光をあてた不公正に取り組む作業が待っている。これこそが緊急事態がもたらす長期的レガシー(遺産)となるべきだ」と訴えたことを紹介。「今までの効率優先・成長力重視で弱い立場の人に苦しみを強いてきた国のあり方を問い直し、コロナ後にはより良い日本と世界をつくることが、政治の大きな責任だということを言いたい」と語りました。