九州南部を襲った記録的大雨から11日で1週間がたちます。被災地では行方不明者の捜索や復旧に向けて、住民の奮闘が続いています。市街地の大半が浸水した熊本県人吉市では、住民とともに県内のボランティアが本格的に復旧活動を始めています。(武田祐一)
市の中心街では歩道や商店の敷地に泥が積もり、野菜が腐ったようなにおいが立ちこめています。店舗では従業員が泥水をかぶった家具や商品などを店の外に運び出し、ホースや高圧洗浄器で泥を洗い流していました。
親せきと作業をしていた男性(65)は「家具やごみを出す集積所が1カ所しかなく、時間制限があって、持っていっても置いてこれんこともある。集積場所を増やすか、市が回収してくれんか」と要望しました。
美容室を営む女性(42)は「2メートル50センチまで水がきました。コロナで減ったお客さんがやっと戻ってきて、これからというときなのに」と顔をくもらせます。昨年12月に2階にあった店を1階に移したばかりで、「二重ローンも心配です」。
スタッフ総出で掃除をしていた歯科医院。副院長の松本一文(ひでふみ)さん(42)が「4日の朝、7時くらいに水がきてあっという間に水没した」と当日の様子を振り返ります。治療に使う機械を含め、復旧には3000万円以上かかり、診療再開までには3カ月くらいかかるとみています。「治療を待っている患者さんもいます。なんとか早く再開したい」と語りました。
ボランティア始まる
地震の時の恩返し
泥水にまみれた家財道具を店から運び出していたのは熊本県八代市の秀岳館高校の生徒たち。同校2年生(17)は「5人一組で作業をしています。部活ごとにバスに乗って参加しています。昨日は250人参加しました」と話します。
国宝の神社浸水
観光名所の国宝・青井阿蘇神社も、大きな被害を受けました。同神社は806年創建です。宮司の福川義文さん(56)は言います。「こんなことは初めてです。球磨川までの距離は200メートルくらいありますが、本殿の床上まで浸水しました。せめてお参りするところだけでもと思い、きれいにしました。復旧には時間がかかりそうです」
日本共産党の熊本豪雨災害ボランティアも活動をはじめ、泥出しや片付けに取り組みました。同県球磨村でボランティアをした荒木俊彦さん(66)は同県大津町議です。「渡地区に入りました。2階屋の天井まで水につかり、天井が落ちていました。水害のすさまじさを感じました。2階の床に2センチほど泥が積もっていました。熊本地震でお世話になったので今度は恩返しの思いです」
想像以上の被害
熊本市の男性(57)は「人吉市は思った以上に被害がひどい。ぬれた畳や布団がすごく重くなっていて運び出すのに苦労しました」と言います。
人吉市のボランティアセンターも同日、市内の川上哲治記念球場の隣に開設されました。
同県天草市の男性(42)は「今朝6時半に出て来ました。自営業で時間に余裕があり、今日と明日は泥だしボランティアをするつもりです」と語ります。
市社会福祉協議会の松岡誠也事務局長は「新型コロナウイルス対策で、ボランティアは県内限定で連日200人募集しています。初日は58人が参加しています」と言います。◇
今回の豪雨被害で、これまでに九州で確認された死者は、熊本県60人、福岡県2人、大分県1人の計63人。行方不明者も16人おり、消防などによる捜索が続きます。熊本では2200人超が避難しています。