日本共産党の志位和夫委員長が28日、安倍晋三首相あてに届けた「新型コロナ対策にかんする緊急申し入れ」の全文は次の通りです。
新型コロナウイルスの感染急拡大は、きわめて憂慮すべき事態となっている。感染の急激な拡大が、医療の逼迫(ひっぱく)、さらに医療崩壊を引き起こし、救える命が失われることが、強く懸念される。
にもかかわらず政府が、感染拡大抑止のための実効ある方策を打ち出さず、反対に感染拡大を加速させる危険をもつ「Go To トラベル」の実施を強行するなどの姿勢をとっていることは、重大である。
現在の感染急拡大を抑止するには、PCR等検査を文字通り大規模に実施し、陽性者を隔離・保護するとりくみを行う以外にない。
この立場から、以下、緊急に申し入れる。(一)
感染震源地(エピセンター)を明確にし、その地域の住民、事業所の在勤者の全体に対して、PCR等検査を実施すること。
現在の感染拡大は、全国でいくつかの感染震源地(エピセンター)――感染者・とくに無症状の感染者が集まり、感染が持続的に集積する地域が形成され、そこから感染が広がることによって起こっていると考えられる。
たとえば、東京都では、新宿区は、感染者数、陽性率ともに抜きんでて高くなっており、区内に感染震源地が存在することを示している。東京の他の一連の区、大阪市、名古屋市、福岡市、さいたま市などにも感染震源地の広がりが危惧される。
政府として、全国の感染状況を分析し、感染震源地を明確にし、そこに検査能力を集中的に投入して、大規模で網羅的な検査を行い、感染拡大を抑止するべきである。
これらの大規模で網羅的な検査を行う目的は、診断目的でなく防疫目的であること、すなわち無症状者を含めて「感染力」のある人を見つけ出して隔離・保護し、感染拡大を抑止し、安全・安心の社会基盤をつくることにあることを明確にしてとりくむ。(二)
地域ごとの感染状態がどうなっているのかの情報を、住民に開示すること。
たとえば、東京都では、新規感染者数とともに、検査数、陽性率を何らかの形で明らかにしている自治体は、14区市(新宿区、中野区、千代田区、大田区、世田谷区、足立区、台東区、墨田区、中央区、北区、品川区、杉並区、八王子市、町田市)にとどまっており、他の自治体では検査数、陽性率が明らかにされていない。
全国をみても、20の政令市のすべてで、市内の地域ごとの検査数、陽性率が明らかにされていない。これではどこが感染震源地なのかを、住民が知ることができない。
ニューヨークなどでは、地域ごとの感染状態が細かくわかる「感染マップ」を作成し、明らかにしている。
感染状態の情報開示は、あらゆる感染対策の土台となるものである。(三)
医療機関、介護施設、福祉施設、保育園・幼稚園、学校など、集団感染によるリスクが高い施設に勤務する職員、出入り業者への定期的なPCR等検査を行うこと。必要におうじて、施設利用者全体を対象にした検査を行うこと。
感染拡大にともなって、これらの施設の集団感染が全国で発生しており、それを防止することは急務である。(四)
検査によって明らかになった陽性者を、隔離・保護・治療する体制を、緊急につくりあげること。
無症状・軽症の陽性者を隔離・保護するための宿泊療養施設の確保を緊急に行う。自宅待機を余儀なくされる場合には、生活物資を届け、体調管理を行う体制をつくる。
中等症・重症のコロナ患者を受け入れる病床の確保を行う。新型コロナの影響による医療機関の減収補償は急務である。減収によって、医療従事者の待遇が悪化するなどは絶対に許されない。医療従事者の処遇改善、危険手当の支給、心身のケアのために、思い切った財政的支援を政府の責任で行うことを強く求める。
もはや一刻も猶予はならない。日本のPCR検査の人口比での実施数は、世界で159位であり、この異常な遅れは、どんな言い訳も通用するものではない。政府が、自治体、大学、研究機関、民間の検査会社など、あらゆる検査能力を総動員し、すみやかに行動することを強く求める。
感染者の急増が見られる主な地域の陽性率
日本共産党の志位和夫委員長が28日の「新型コロナ対策にかんする緊急申し入れ」のさいに示した「感染者の急増が見られる主な地域の陽性率」は以下のとおりです。
〈東京都〉
○東京都 6.5%(7月21日時点)
・新宿区 32.2%(7月6~12日)
・中野区 14.9%(7月13~18日)
・世田谷区13.7%(7月17~23日)
・千代田区12.7%(7月13~19日)
・足立区 9.6%(7月15~21日)
・台東区 9.5%(7月13~19日)
・墨田区 9.4%(7月21日時点)
・中央区 9.2%(7月12~18日)
・北区 8.6%(7月11~17日)
・品川区 7.1%(7月1~17日)
・大田区 4.8%(7月13~19日)
・杉並区 4.5%(7月13~19日)
・八王子市11.3%(7月13~19日)
・町田市 2.5%(7月14~20日)
(注)上記14区市は、陽性率を何らかの形で明らかにしている自治体。
(出典)東京都、足立区、墨田区、品川区、杉並区は、自治体HPに掲載された「陽性率」を転記。
新宿区は、中曽根平和研究所の高橋義明.主任研究員の論考より。
中野区は、区HPの「感染症発生動向調査集計結果.令和2年 第28週分」に掲載された「陽性者数」「検査数」から計算。
世田谷区、千代田区、台東区、中央区、北区、大田区、八王子市、町田市は、自治体HPに掲載された「陽性者数」「検査数」から計算。
〈埼玉県.さいたま市〉
○埼玉県 3.7%(7月26日時点)
○さいたま市 6.3%(7月26日時点)
(出典)埼玉県.さいたま市ともに、自治体HPに掲載された「陽性率」を転記。
〈神奈川県.横浜市.川崎市〉
○神奈川県 3.6%(7月27日時点)
○横浜市 3.7%(7月13~19日)
○川崎市 4.2%(7月13~19日)
(出典)神奈川県、横浜市、川崎市ともに、自治体HPに掲載された「陽性率」を転記。
〈千葉県.千葉市〉
○千葉県 5.1%(7月25日時点)
○千葉市 5.2%(7月27時点)
(出典)千葉県、千葉市ともに、自治体HPに掲載された「陽性率」を転記
〈愛知県.名古屋市〉
○愛知県 11.2%(7月20~26日)
○名古屋市 「算出中」(7月27日時点)
(出典)愛知県は、県HPに掲載された「陽性者数」「検査数」から計算。
名古屋市は、市HPより転記。
〈大阪府.大阪市.堺市〉
○大阪府 9.4%(7月27日時点)
○大阪市 9.9%(7月22日時点)
○堺市 6.2%(7月26日時点)
(出典)大阪府、大阪市、堺市ともに、自治体HPに掲載された「陽性率」を転記。
〈福岡県.福岡市.北九州市〉
○福岡県 6.5%(7月20~26日)
○福岡市 10.4%(7月20~26日)
○北九州市 2.2%(7月27日時点)
(出典)福岡県、北九州市は自治体HPに掲載された「陽性率」を転記。
福岡市は、市HPに掲載された「陽性者数」「検査数」から計算。
【備考(1)】検査数.陽性率を公表していない東京都特別区(11区)の状況
○感染者数.患者数のみHPに掲載
……練馬区、豊島区、港区、渋谷区、江東区、江戸川区、葛飾区
○東京都HPのリンクを添付
……目黒区、文京区、荒川区
【備考(2)】政令市(20市)における地域ごとの感染者数.検査数.陽性率の公表について
○地域ごとの検査数.陽性率を公表している市はない。
○横浜市、千葉市は、行政区ごとの感染者数を公表。
○静岡市、福岡市、北九州市、熊本市は、感染者の属性欄に居住区を記載。
○上記以外の政令市は、地域ごとの感染者数の発表もない。