被爆75年の9日、長崎県内の五つの被爆者団体の代表は、長崎市内で安倍晋三首相と面談し、核兵器禁止条約の署名・批准や被爆体験者への制度の抜本的改善などの要望書を手渡しました。
代表してあいさつした県被爆者手帳友の会の朝長万左男会長(77)は、「被爆者はわが国の核兵器禁止条約不参加に涙した」と述べ、核兵器禁止条約を43カ国が批准していることにふれて具体的行動を求めました。
要望書では、「核兵器や大量破壊兵器の所有は平和を絶えず試みにさらす」としたフランシスコ教皇の平和メッセージにもふれ、日本政府に対して「被爆国の責務として核兵器禁止条約に署名、批准し、核保有国と非核保有国の分断をつなぐ役割を果たしてください」と要請。「首相をはじめ、各国首脳に広島、長崎を訪問し、原爆資料館を自身の目で見て、感じて、考えてください」と求めました。
安倍首相は禁止条約について、核軍縮をめぐる国家間の隔たりを理由に「アプローチが異なる」として背を向けました。
面談後、長崎原爆被災者協議会の田中重光会長(79)は「『橋渡し』というなら核兵器をなくす側に立って禁止条約に署名し、核保有国などに条約参加を迫るべきです」と指摘。「武器で平和はつくれない。核兵器は新型コロナウイルスの感染防止に何の役にも立たない。核兵器に使うお金をコロナ対策に回すのが政治の責務だ」と語りました。
核兵器禁止条約 首相、支持せず
安倍晋三首相は9日、長崎市内で記者会見し、広島・長崎両市長から核兵器禁止条約の署名・批准を求められたことについて問われ、核保有国が参加していないことを理由に、同条約を支持しない立場を改めて表明しました。
安倍首相は同条約について、「核廃絶のゴールは共有している」としつつ、「安全保障の現実を踏まえることなく作成されたため、核兵器国は一国として参加していない。核の脅威にさらされている非核兵器国からも支持を得られていない」と述べました。
その上で、「核軍縮をめぐって国家間の立場の隔たりが拡大している」とし、「立場の異なる国々の『橋渡し』に努め、核軍縮に向けた努力を粘り強く促していく。核兵器禁止条約は、わが国のアプローチを異にしているものと言わざるを得ない」と従来の主張を繰り返しました。
さらに、国民の生命と財産を守り抜くためとして、「防衛力を強化するとともに、拡大抑止を含む日米同盟の抑止力を強化する」と強調し、「拡大抑止」=米国の核の傘にしがみつく姿勢を示しました。