事実と道理で批判 打開の方策を提起
日本の領土である尖閣諸島の周辺海域での領海侵犯の頻発、香港や新疆(しんきょう)ウイグル自治区での人権抑圧の深刻化など、近年、国際社会の懸念を強める中国の行動が続いています。日本共産党はこれまで一貫して、こうした平和や民主主義、人権保障に逆行する中国の危険な動きを、事実に基づき、国際法にのっとって、厳密で理性的な批判を加え、事態の打開の方策を提案してきました。他方、いまの政権与党の自民党、公明党は、これらの問題で道理ある批判的な視点を欠き、政権与党に求められる責任ある姿勢を示せないでいます。この間の経緯を振り返ってみました。
日本共産党は
「文化大革命」
(写真)会談する志位和夫委員長(左)と孔鉉佑駐日中国大使=2019年10月15日、日本共産党本部 |
1966年から10年間にわたる「文化大革命」について、社会主義・共産主義とは無縁の毛沢東派による、「無制限な専制支配をうちたて、〔…〕計画的にひきおこした政治闘争」(67年10月10日付論文)と本質をズバリつく批判をおこないました。すでに毛沢東派は、「鉄砲から政権が生まれる」と暴力革命をおしつけ、それを拒絶する日本共産党を「修正主義」と打倒の対象とし、大規模な干渉に乗り出していました。それ以降の32年間にわたる日中両党の関係断絶の原因となりました。
天安門事件
(写真)天安門事件について、中国共産党と政府指導部を糾弾する日本共産党中央委員会声明を掲載する「赤旗」1989年6月5日付 |
89年6月、民主化を求める学生らの平和的デモを中国指導部が武力弾圧したのに対し、「中国党・政府指導部の暴挙を断固糾弾する」との党中央委員会声明を発表し、断固とした抗議を内外に明らかにしました。
日中両党関係正常化
98年に中国共産党が文革時の日本共産党への攻撃・干渉への反省を表明したのを受け、それを共同コミュニケで確認し、両党関係は正常化しました。
この際も両党首脳間の会談で、日本共産党は天安門事件への批判的立場を再度表明し、「言論による体制批判に対しては、これを禁止することなく、言論で対応する」ことの重要性を指摘しました。
関係正常化後も、尖閣問題では国際法に基づいた道理ある態度を表明し、中国との意見の違いが表面化しました。ノーベル平和賞受賞者劉暁波(りゅう・ぎょうは)氏の問題、チベット問題などでも、日本共産党の立場を直接外相に表明し、書簡を通じて総書記にも伝えています。
28回大会での綱領改定
昨年1月の第28回党大会で党綱領を改定し、中国の大国主義、覇権主義に対する批判を綱領上明確にし、中国について「社会主義を目指す新しい探究が開始され」た国という規定を削除しました。核兵器禁止条約への反対など核兵器問題での変質、東シナ海と南シナ海での覇権主義的行動、香港や新疆ウイグル自治区などでの重大な人権抑圧の深刻化などによるためです。
この大会の前には、党本部を訪問した孔鉉佑(こう・げんゆう)駐日中国大使にたいし、中国についての党の立場を説明し、本国に伝えるよう要請しました。
強まる現状変更の動き
(写真)日本の尖閣諸島領有の正当性を主張した志位和夫委員長と程永華中国大使の会談を報じる2012年9月22日付「しんぶん赤旗」 |
中国は、日本の尖閣諸島で公船による領海侵入を繰り返し、東南アジア諸国との間で領有権紛争を抱える南シナ海では軍事拠点を構築するなど、力による現状変更の動きを続けています。今年2月には海警法を施行。中国周辺の広い海域を「わが国の管轄海域」と一方的に規定し、海警局の公船に「武器使用」を含む強制措置をとる権限まで認めました。
日本共産党は、改定綱領を力に、中国の覇権主義の強まりに毅然(きぜん)として対応してきました。紛争の平和的解決を定めた国連憲章や国連海洋法条約など、国際法に基づいた批判は、政界やメディアなどから広く注目されています。
国際社会の対応を提言
覇権主義的なふるまいを強める中国にたいして、国際社会がどう対応すべきか。軍事的対応の強化でこたえるのでは、“軍事対軍事”の悪循環をつくり、一触即発の事態に陥る危険さえあります。軍事偏重の危険なエスカレーションの道に日本共産党は厳しく反対し、以下の対応を提起しています。
第一に、「国連憲章と国際法を順守せよ」と中国に迫っていく国際世論による外交的包囲です。価値観の一致は基準にはならず、国際基準は、国際法しかありません。第二に、中国を排除するのではなく、中国を含めたインクルーシブ(包含的)な枠組みでの外交をすすめることです。その点では、2014年には北東アジア平和協力構想を提起し、その後も事態の進展にあわせて、東アジアの平和に向け、積極的に発信してきました。
自由・民主主義・人権 花開く社会めざす日本共産党
日本共産党のめざす社会主義・共産主義は、資本主義のもとでの自由・民主主義・人権の成果を全面的に受け継ぎ、花開かせる社会です。日本では、今の中国のような一党制、自由な言論による体制批判を禁じるような抑圧は、断固として排することを明確にしています。
自民党・公明党は…
香港での民主化運動の弾圧、新疆ウイグル自治区やチベット自治区での少数民族への抑圧について自公政権は、憂慮や懸念を表明するにとどまり、中国側に中止や是正を明確に求めてはいません。
海警法については、自公政権は「同法が国際法に違反する形で運用されることはあってはならない」とのべるだけです。昨年11月に来日した中国の王毅(おう・き)外相が、尖閣周辺での中国公船の活動を“日本側に問題があったから、やむを得ず中国として対応をしている”と日本側に責任を転嫁する不当な発言した時も、横にいた茂木敏充外相(自民)は、何ら反論や批判もしないという極めてだらしない態度に終始しました。
両党のこうした態度は、今に始まったことではありません。
天安門事件のさい、自民党の宇野政権は、「遺憾」とは言いながら、「隣国でございますから、抗議しろとか非難しろとか、そういう考えは私は全くもっておりません」(1989年6月、宇野宗佑首相)と、事実上、中国の蛮行を容認する態度に終始し、主要7カ国(G7)首脳会議など国際舞台では、対中非難の緩和を各国に働きかけるほどでした。
公明党は、天安門事件について「憂慮」「正当化できない」とのべたものの、「事態の収拾過程を慎重に見極めるべきだ」などとして、非難、抗議はなしでした。
公明党はまた、「中国は文化大革命に成功し、自信をもち、中国人民は燃えるような息吹で新中国の建設に取り組んでいる」(71年)などとして、文化大革命を称賛したのです。その後も公明党は、歴代の中国指導部とのパイプ役を自任してきました。
その一方で、自民、公明両党は、中国の事態を最大限に利用して、日本共産党攻撃を繰り返しました。(「しんぶん赤旗」7月1日付より)