いとこの行方、今も…
海へ続く幅数十メートルの泥の堆積
土石流で大きな被害が出た静岡県熱海市伊豆山(いずさん)地区に4日、記者が入りました。急傾斜の住宅街から海の方向に、幅数十メートルはありそうな茶色い泥の堆積が続き、その中に壊れた住宅の屋根や自動車が埋まります。一挙に住宅などを押し流した土石流の、生々しい傷痕でした。(武田祐一、写真も)
一帯は現在も断水中。現場からほど近い仲道公民館前では「熱海市」と書かれたタンクが置かれ、給水活動が行われていました。
「キャーという悲鳴のあと、いとこの電話は途絶えたそうです」
避難の手配などで連絡を取り合っていた様子の人(72)が、声を落とします。
「友人がいとこに避難をうながす電話をしている時のことでした。いとこの女性は自宅ごと流され、今も行方は分かっていない」
現場は曲がりくねった山道に小学校や神社、公民館、商店などが並ぶ地域。周辺の道路は危険区域として規制されており、東京消防庁から派遣された消防車両や救助用の特殊車両などが10台以上並んでいました。
同地区在住で、家族と公民館を訪れていた会社員の男性(31)が被害当日を振り返ります。「午前10時半ごろ、近所の人から小学校に逃げるように言われた。家を出て高台に向かった。第1波の土石流が来たので、近隣にも逃げるよう声をかけていたら第2波、第3波がきた。でも、命あればこそです」
日本共産党の小坂幸枝熱海市議は土石流が住宅を最初に押し流した地点付近から、逢初川の河口付近まで歩いて被害現場を調査し、住民の要望を聞きました。
複数の避難所で、「断水とガスも不通のため、トイレも風呂も使えないのが一番こまる」という声が共通して聞かれました。
小坂議員は「市とホテル業者で連携し、避難者を受け入れる準備をしている」と伝えて回りました。
昼頃には受け入れ先が決まり、ホテルに向かうマイクロバスが公民館前に到着。家を失った人たちが乗り込んでいきました。
海岸線に近い国道135号付近では、浮き上がるように泥の中で止まったバスの周辺の土砂を、ショベルカーがダンプに移して撤去していました。
現地ではこの日も霧のような雨が断続的に降りました。熱海ビーチライン付近では行方不明者の捜索作業中、居合わせた人の携帯電話からアラーム音が一斉に鳴る場面も。捜索関係者も作業を中断し、海側から陸の方に上がってきました。
上流側の現場近くでは、岩の隙間から透き通った水が湧き出しているところも複数、目にしました。
上流側の現場で、逢初川から約30メートルの場所で酒店を営んでいる男性(65)に、いま住民が困っていることを聞くと「一番は水だが、薬や下着といった生活必需品も足りていない」と話しました。