志位委員長のあいさつ
日本共産党の志位和夫委員長は10日、特別国会開会にあたって、国会内で開かれた党国会議員団総会で、次のようにあいさつしました。
みなさん、おはようございます(「おはようございます」の声)。総選挙での大奮闘、本当にお疲れさまでした。特別国会の開会にあたりまして、ごあいさつを申しあげます。
比例代表の416万6076票――重みをしっかり受け止め、新しい国会で頑張りぬく
冒頭に、総選挙で、日本共産党を支持してくださった有権者のみなさん、コロナ危機のもと、大奮闘していただいた支持者、後援会員・サポーター、党員のみなさんに、心からの感謝を申し上げます(拍手)。また、この選挙をともにたたかい、大奮闘されたすべての比例代表候補者、小選挙区候補者のみなさんに、熱い敬意と連帯のメッセージを送りたいと思います。(拍手)
日本共産党の結果ですが、まず、沖縄1区で、「オール沖縄」の赤嶺政賢さんが、得票数も、得票率も伸ばして、3度目の勝利をかちとり、宝の議席を守り抜いたことを、心から喜びたいと思います。(拍手)
宮本岳志さんの国会議員団への復帰をみんなで歓迎したいと思います。(拍手)
日本共産党が、比例代表で11議席から9議席に後退したことは、たいへん残念な結果です。コロナ危機のもとでの全国のみなさんの懸命の大奮闘、また、わが党に寄せられた多くの方々からのご期待を、結果に結びつけることができなかったことは、わが党の力不足であり、責任を痛感しております。
日本共産党にお寄せいただいた比例代表の416万6076票――その一票一票の重みをしっかりと受け止めて、新しい国会で頑張りぬきたいと思います。(拍手)
4中総――総括と教訓を明らかにし、参院選躍進の方針をつくりあげる
11月27日と28日、第4回中央委員会総会を開催します。4中総では、第28回党大会決定、2中総決定、3中総決定を踏まえ、全国の都道府県委員長・地区委員長のみなさんにお願いしている「総選挙をたたかってのアンケート」を踏まえて、しっかりと総括と教訓を明らかにし、来年の参議院選挙で躍進に転ずる方針をつくりあげていきたいと考えています。
総選挙結果の全体をどうみるか――4年間で政党間の力関係がどう変わったか
総選挙の結果の全体をどうみるか。
私は、4年前の総選挙と今回の総選挙で、政党間の力関係がどう変わったかを冷静に検証することが大切だと思います。政党の政治的立場を、「与党勢力」、「与党の補完勢力」、「共闘勢力」の三つに分類し、4年前の総選挙と今回の総選挙の比較をすると次のようになります。
――まず「与党勢力」はどうか。4年前に比べて、自民と公明は合計で、比例得票では150万票を増やしていますが、議席では19議席を減らしています。
――次に「与党の補完勢力」はどうか。4年前の総選挙では、「希望の党」という政党がありました。わが党は、この党について、「安保法制容認」「9条を含む憲法改定」を政治的主張の要にすえ、この二つを「踏み絵」にして野党共闘を破壊する「与党の補完勢力」だと見定め、正面からたたかいました。この党を構成した個々の政治家は、その後、立憲民主党に合流し、今回の総選挙では、わが党とも協力している方々が少なくありませんが、「希望の党」の政党としての政治的立場は、まぎれもなく「与党の補完勢力」でありました。
「与党の補完勢力」は、4年前の希望、維新の合計と、今回の維新で比較しますと、比例得票では501万票を減らし、議席では20議席を減らしています。
――最後に「共闘勢力」はどうか。4年前、共闘してたたかった共産、立民、社民の合計と、今回共闘してたたかった共産、立民、れいわ、社民の合計で比較しますと、比例得票では246万票を増やし、議席では42議席を増やしています。
これがこの4年間の政党間の力関係の変化を示す客観的な数字であります。
比例得票でも議席でも「共闘勢力」は前回比増加――大局的な確信をもってのぞもう
今回の結果をもって、一部メディアは、「自民勝利、維新躍進、共闘惨敗」といった見方を流布していますが、これは事実と異なるということを、はっきりと言っておきたいと思います。(「そうだ」の声、拍手)
自民党など「与党勢力」は、比例得票数では増やしましたが、野党共闘によって議席を減らしました。これをもって「勝利」とは呼べません。
維新が伸びたことは事実ですが、「与党の補完勢力」を全体でみると、比例得票数も議席も減らしています。
それに対して、「共闘勢力」は、比例得票数も議席も増やしています。わが党が減らしたことは残念ですが、全体でみれば増やしています。そこにはこの4年間、市民と野党の共闘が、さまざまな困難や逆流を乗り越えながら、国会内外で共闘の努力を積み重ねてきたことの確かな成果が示されているのではないでしょうか。歴史は決して無駄に流れていない。そのことへの大局的な確信をもって今後にのぞむことを訴えたいと思います。(拍手)
野党共闘が一定の成果をおさめたことは明瞭――その発展・強化こそが求められている
そのうえで、今回の総選挙における市民と野党の共闘の成果と課題について、現時点で言えることを述べておきたいと思います。
日本共産党は、今度の総選挙で、「野党共闘で政権交代を始めよう」と力いっぱい訴えてたたかいました。自公政権の継続を許したことは残念ですが、このたたかいは、選挙後の常任幹部会の声明で強調したように、「最初のチャレンジとして大きな歴史的意義があった」と確信するものです。
野党共闘の成果について確認しておきます。今回の総選挙で、野党は初めて、共通政策、政権合意、選挙協力という「3点セット」の合意を実現してたたかいました。その結果、全国59の小選挙区で「共闘勢力」が一本化をはかった候補者が激戦を競り勝ち、自民党の重鎮や有力候補を落選させました。くわえて33の小選挙区で「共闘勢力」の候補者が自民党候補者の得票の90%以上を得る善戦・健闘の結果となりました。
これらの結果は、野党がバラバラにたたかっていたら自民党などの圧勝を許したことを示しています。それはまた、野党共闘がさらに力を発揮していたら選挙結果はまったく異なるものになっていたことも示しています。
一部に「野党共闘は失敗」と非難する議論がありますが、事実はまったく異なることはこの数字からも明らかではないでしょうか(「そうだ」の声、拍手)。野党共闘が一定の成果をおさめたことは明瞭であり、その発展・強化こそが求められているのではないでしょうか。(大きな拍手)
どのように共闘の発展・強化をはかるか――課題克服へ対話すすめ前向きの方向共有を
それではどのように発展・強化をはかるか。
選挙後の常任幹部会の声明では、野党共闘の成果を確認するとともに、次のように、率直に、「今後の課題」について述べました。
「同時に、野党共闘は、今後の課題も残しました。とくに、野党が力をあわせて、共通政策、政権協力の合意という共闘の大義、共闘によって生まれうる新しい政治の魅力を、さまざまな攻撃を打ち破って広い国民に伝えきる点で、十分とは言えなかったと考えます。共闘の大義・魅力を伝えきれなかったことが、自公の補完勢力=『日本維新の会』の伸長という事態を招いた一因にもなりました」
選挙期間中、野党共闘に対して、自民、公明、維新などは、激しい攻撃をくわえました。私は、それ自体が、彼らがいかに野党共闘を恐れているか――共闘の威力を証明するものとなったと思います。ただ、そうした攻撃に対して、野党が力をあわせて、共同の反撃の論陣を張るまでにはいたらなかったことも事実でした。
「共闘の大義・魅力を伝えきれなかった」という点で、共闘態勢の構築が遅れたことは、大きな弱点となりました。共通政策の合意が9月8日、政権協力の合意が9月30日、選挙協力の合意は解散前日の10月13日でした。共通政策と政権協力の合意は、それぞれが画期的な内容であり、大義もあれば魅力もあるものでしたが、さまざまな攻撃を打ち破って、それを広く国民に伝えるには一定の期間がどうしても必要でした。共闘態勢の構築が選挙間際まで遅れたことも、大きな反省点だと考えます。
日本共産党は、ともに選挙をたたかった他の野党のみなさん、市民連合のみなさんと、市民と野党の共闘がどういう成果をあげたか、どういう課題を残したか、今後どう発展させるべきかについて、胸襟を開いてよく話し合い、前向きの認識と今後の方向を共有するために、全力をつくしたいと表明するものです。(拍手)
首相指名選挙――共産・立民の合意と公約を順守する立場から枝野代表に投票する
本日の首相指名選挙の対応について述べます。日本共産党は、自主的判断として、立憲民主党代表の枝野幸男氏に投票することにします。枝野氏は党代表を辞任することを表明していますが、日本共産党と立憲民主党とは公党間の合意として、共通政策、同時に政権協力に合意しており、これは国民に対する公約でもあります。合意と公約を誠実に順守する立場から、枝野代表に投票するという態度にしたいと思います。
国民の声を聞かない自民と公明の政治がいつまでも続いていいわけがないではありませんか。日本の政治を変える道は、共闘しかありません。日本共産党は、共闘の道を揺るがずに発展させるために、引き続きあらゆる知恵と力をつくす決意であります。(拍手)
総選挙で掲げた公約の実現のために、全力をあげて奮闘する
総選挙の訴えで、わが党は、コロナから命と暮らしを守る政策的提案、自公政治からの「四つのチェンジ」――新自由主義を終わらせ命・暮らし最優先の政治、気候危機を打開する政治、ジェンダー平等の日本、憲法9条を生かした平和外交――を訴えぬきました。どの訴えも、国民の利益にかない、声が届いたところでは共感を広げたという報告が、全国でともにたたかったみなさんから共通して寄せられています。
とくに気候危機打開とジェンダー平等――この二つの課題は、総選挙での訴えにとどまらず、今後も大いに発展させていきたいという声がたくさん寄せられていることも報告しておきたいと思います。
総選挙で掲げた公約の実現のために、全力をあげて奮闘する決意を、衆参議員団として固め合いたいと思います。(大きな拍手)
とくに、国会を舞台にした論戦とともに、あらゆる分野で国民の切実な要求に根差した国民的運動を草の根から起こし、国民の世論と運動によって政治を変える、力強い流れを起こしていくために、知恵と力をつくしたいと思います。
草の根からの世論と運動で岸田政権を包囲し、政治を変える新たなたたかいを
最後に、岸田政権とのたたかいについて述べたいと思います。
総選挙での論戦をつうじて、岸田政権の正体が、安倍・菅政治の継承であることが明らかになりましたが、選挙後のわずかな期間の岸田政権の動きを見ても、安倍・菅政治と基本において変わることのない政権であることが明瞭となっています。3点ほど述べたいと思います。
沖縄に対する強権政治――「オール沖縄」のたたかいへの連帯をよびかける
一つは、沖縄に対する強権政治であります。
6日、松野官房長官が沖縄に行きましたが、そこで語ったことは、辺野古新基地建設を「唯一の解決策」として押し付ける政府方針を繰り返すことでした。
新基地建設は、超軟弱地盤、戦没者の遺骨の眠る土砂の利用など、計画自体が二重三重に破綻しています。この問題は新たな局面を迎えているのです。にもかかわらず、破綻した計画を「唯一の解決策」として押し付ける。このような強権政治を絶対に許してはなりません。「オール沖縄」のたたかいへの全国の連帯のたたかいを心から呼びかけたいと思います。(拍手)
気候危機に対する無責任きわまる対応――日本政府に「化石賞」
二つ目は、気候危機に対する無責任きわまる対応です。
2日、英国で開催された国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)において、気候行動ネットワークは、日本政府に対して、「化石賞」を贈りました。岸田政権が石炭火力発電を使い続けるという姿勢をとっていること、アンモニアと水素を使った火力発電を「ゼロエミッション火力」として妄信していること、この二つが授賞理由となりました。日本共産党が「気候危機打開の2030戦略」で批判した日本政府の対応の致命的弱点が、国際舞台でも厳しく批判される結果となりました。
いま世界でも、日本でも、若い世代を先頭にした気候危機打開の運動の大きなうねりが起こっています。この運動に連帯し、日本共産党の「2030戦略」の実現に向けて力をつくそうではありませんか。(拍手)
憲法9条改定への新たな危険――草の根からの運動を急速に広げることをよびかける
三つ目は、憲法改定をめぐる新しい危険に正面から立ち向かうことです。
自民党は総選挙の公約に、「自衛隊の明記」「緊急事態条項」など改憲4項目を掲げ、選挙後、岸田首相は「憲法改正に向け、精力的に取り組んでいきます」と述べました。維新の会は、「来年の参院選までに改正案を固めて(参院選の投票とともに)国民投票を実施すべきだ」と改憲策動の先兵の役割を果たしています。維新は、「教育費の無償化」のための憲法改定などと言っていますが、自民党との協力が具体化されていけば、そこから出てくる改憲案は、9条改憲を含むものとならざるをえないでしょう。
海外での戦争に何の制約もなくのりだす日本にしていこう――こうした危険な策動を絶対に許してはなりません。改憲勢力の危険なたくらみを打ち砕くために、草の根から国民的な世論と運動を急速に広げることを心から呼びかけるとともに、日本共産党がこのたたかいの先頭にたって奮闘する決意を固め合いたいと思います。(大きな拍手)
3点ほど申しましたが、岸田政権の行動の一歩一歩が、国民が退場を求めた安倍・菅政治の継承となります。ここにこの政権の抱える根本的な矛盾があります。
あらゆる分野で、草の根から国民的な世論と運動を起こし、その力で岸田政権を包囲し、政治を変える新たなたたかいにのぞもうではありませんか。(「よーし」の声、拍手)
党を強く大きくして、参議院選挙で必ず躍進に転じよう
党を強く大きくして、参議院選挙で必ず躍進に転ずるために、全党のみなさんと力をあわせて奮闘しようではありませんか。(大きな拍手)
これで開会にあたってのごあいさつといたします。
新しい国会でともに頑張りましょう。(大きな拍手)
『しんぶん赤旗』11月11日付より