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徹底検証 大軍拡 平和と暮らし破壊

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異次元の膨張路線 5兆円超に60年以上→岸田政権5年

「いわゆる敵基地攻撃能力も含め、あらゆる選択肢を排除せず、防衛力を抜本的に強化する」―。岸田文雄首相は歴代政権で初めて違憲の敵基地攻撃能力の保有検討を表明し、そのための大軍拡の検討を指示しました。既に政府内の有識者会議や与党協議がスタート。年末には、新たな国家安全保障戦略など「安保3文書」の決定にあわせ、5年以内に軍事費2倍化を狙っています。「軍事最優先」だった戦前の反省を踏まえた国家財政の構造を大きく変える危険があります。

戦後、初めて計上された軍事費は1310億円。1950年度、自衛隊の前身である警察予備隊の編成に伴うものです。憲法9条で「戦力不保持」を掲げているにもかかわらず、日本は60年の日米安保条約改定以降、右肩上がりの軍拡を続けてきました。第2次安倍政権期の2016年度、ついに当初予算で5兆円を突破。22年度は約5・4兆円を計上しています。さらに、12年度以降、補正予算への軍事費計上も常態化。事実上、「準軍事費」になっています。

「GNP比1%」

 最初の「防衛計画の大綱」を決定した1976年、当時の三木政権は軍事費の上限を定める「GNP(国民総生産)比1%」枠を決定。87年に中曽根政権が同枠を廃止しますが、その後も「GDP(国内総生産)比1%」が一定の目安になってきました。

 ところが今年に入り、ロシアのウクライナ侵略に乗じた大軍拡論が噴出。岸田首相は、「5年以内の防衛力の抜本的強化」をバイデン米大統領などに相次いで対外公約し、「GDP比2%の国防費」という「NATO(北大西洋条約機構)基準」採用の検討に入りました。

 具体的には、23年度から毎年度、1兆円ずつ積み増して、27年度に10兆~11兆円程度にする案を検討。23年度から27年度まで、6・5兆円以上→7・5兆円以上→8・5兆円以上→9・5兆円以上→10・5兆円以上―と段階的に引き上げ、5年間で合計42兆~43兆円となります。

国民生活に影響

 年間11兆円規模になれば、日本の軍事費は米中に次ぐ世界第3位になり、「専守防衛」や「軍事大国にならない」ことを掲げた防衛政策の基本を完全に逸脱します。

 しかも、軍事費が5兆円を超えるまで60年以上かかったのに対して、岸田政権はわずか5年間で5兆円を積み増そうとしています。戦後、これだけ急激な軍拡は例がありません。少子高齢化や世界的な物価高の中、こうした異次元の軍拡を強行すれば、国民生活に深刻な影響を与えるのは必至です。政府・与党内では既に、国民負担を求める声が出ています。

暮らし切り捨て財政 軍事費増のしわ寄せさらに

軍事優先・暮らし切り捨て財政は既に始まっています。2013年度以降、軍事費は10年連続で前年度を上回り、8年連続で過去最大を計上。財務省の財政制度等審議会は5月25日付の建議で、こうした一貫した増加は「他の経費の削減・効率化によって実現できたものである」と指摘しています。

 建議によれば、15年度~22年度で軍事費は約4千億円増えましたが、文教科学費は約640億円増にとどまっています(図①)。また、『東アジア戦略概観2022』(防衛省防衛研究所)によれば、2000年度~19年度の主要費目の増加率(決算ベース)では、軍事費123・9%に対し、文教科学費は97・3%にとどまっています。

 日本の教育予算は、いわゆる先進国の中で最低水準にあります。経済協力開発機構(OECD)が3日に発表したデータによれば、日本の国内総生産(GDP)に占める教育機関への公的支出の割合(19年時点)はOECD平均4・1%を大きく下回る2・8%で、データのある加盟37カ国中36位です。

 仮に軍事費2倍化相当のお金を教育予算に回せば、小中学校の給食費無償化、高校・大学の学費無償化など、ほぼすべての教育無償化が実現できます。(図②)

国民負担増 当然視の声

また、前出の財政審建議によれば、軍事費が4千億円増える一方、中小企業予算を含む「その他」が3千億円以上減っています。20年度以降、中小企業は新型コロナウイルスの感染拡大で危機的状況に陥りました。しかし、政府は持続化給付金などの拡充どころか、22年度に同予算を減額。一般歳出全体に占める中小企業予算の割合は11年連続で減っています。

 ここ数年、中小企業予算は1700億円台で推移していますが、これは最新鋭のイージス艦「はぐろ」の建造費(約1730億円)程度でしかありません。防衛省は今後、さらに建造費だけで2500億円以上かかるイージス・システム搭載艦2隻の導入を狙っています。このお金があれば、どれだけの人が救われるのか…。

 年間数百億円ずつの軍事費積み増しでさえ、国民の暮らしにこれだけの影響が出ています。毎年、1兆円ずつの積み増しになれば破滅的な影響は避けられません。

 仮に消費税の増税で賄う場合、おおむね2%分、つまり現在の10%から12%以上への引き上げが必要になります。法人税・所得税増税の声も出ています。

 社会保障費を削減した場合、たとえば公的年金の国庫支出分は半分近くが失われ、結果として約4千万人の年金受給者(公的年金の実受給権者)は1人あたり年間12万円以上削られます。医療費の場合、現役世代の3割自己負担が6割まで拡大します。

 政府内では「自分の国は自分で守るのだから、国民全体で負担することが必要」「(国民に)当事者意識を持ち、幅広く負担してもらう」(9月30日の政府有識者会議)、「国民全体で幅広く負担するのが基本」(28日の財政審分科会)などと、国民の負担増を当然視する議論が相次いでいます。

「2倍でも足りない」

衝撃の“緩和”措置として、財務省などが強調しているのは、他国への軍事援助や恩給費なども軍事費に含める、NATO基準に基づく算出です。防衛省によれば、これを21年度予算に当てはめた場合、同省予算(補正を含む)に海上保安庁予算などを合わせて総額約6・9兆円(=内訳別項)で、GDP比1・24%になります。(図③)

 ただ、すべてのNATO加盟国がこの基準を採用しているわけではなく、国際的にも軍事費の明確な定義は存在しません。仮にNATO基準で“見た目”の額を増やしても、なお「GDP2%」と開きがあります。

 しかも、自民党内にはNATO基準でさえ不満の声が出ています。萩生田光一政調会長は9月23日配信のインターネット番組で、「海保の船を造ったから2%から引いてほしいという話を聞く用意はない」と発言。「本当に必要なものを積み上げたら2%では足りない」と述べ、軍事費2倍化をさらに超える金額を要求しました。

 前出の「東アジア戦略概観」は、過去20年間、軍事費が優遇されてきた事実を認めつつ、「中国が日本を上回るペースで国防費を増加させている」と指摘。「日本の財政事情が厳しいことは周知の事実」だとしながら、「仮に中国との関係で抑止が破綻した場合のコストは…(軍事費増額分では)とどまらないだろう」と述べ、大軍拡の受け入れを要求しています。「中国脅威」を利用した、悪質などう喝です。

 周辺国との緊張をいたずらに高め、国民がみずからの生活を犠牲にして「国防」に協力するのではなく、憲法9条に基づく外交を通じて国際環境の改善に力をつくし、国民生活も向上させる―これが日本の歩む道です。

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