全国革新懇第42回総会 志位委員長の特別報告
日本共産党の志位和夫委員長が20日、全国革新懇第42回総会で行った特別報告は以下の通りです。
こんにちは。日本共産党委員長で、全国革新懇代表世話人の志位和夫です。
「核軍縮G7広島ビジョン」――「核抑止力」論を発信するとは何事か
まず私は、いま行われているG7(主要7カ国)サミットについて、どうしても一言言わずにはおられません。
昨日発表された「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」――これを読みますと重大な内容が書いてあります。このサミットは被爆地で初めて開催されるということで、「核兵器のない世界」に向けたメッセージが出るのではないかという期待が内外から寄せられましたが、この「広島ビジョン」なる文書は、それを真っ向から裏切る内容になりました。
「核兵器のない世界」という言葉が使われていますが、それは「究極の目標」とされ、永久に先送りされる位置づけとなっています。
そして、許しがたいことは、核兵器について「侵略を抑止し、戦争と威圧を防止する」兵器だとして、「核抑止力」論が公然と宣言されたことです。「核抑止力」論というのは、いざという時には核兵器を使用するという威嚇によって相手を抑えつけようという議論です。つまり、いざという時には広島・長崎のような非人道的惨禍を引き起こすこともためらわないというのが「核抑止力」論です。これをこともあろうに被爆地から発信するというのは何事かと言わなければなりません。
その一方で、「広島ビジョン」では一言も触れられていないことがあります。核兵器の非人道性の告発・批判は、一言もありません。NPT(核不拡散条約)第6条にもとづく、核兵器国の核兵器全廃への義務についても、一言も書いていない。そして、核兵器禁止条約について、あたかもこの世界に存在しないかのように、全く無視しています。
私は、言いたい。首脳らは原爆資料館で一体何を見たのか。
被爆地から核兵器に固執する宣言を出したことは、許し難いことと言わなければなりません。
被爆国・日本が、こうした態度をあらためて、核兵器禁止条約に一日も早く参加することを、ご一緒に求めようではありませんか。(拍手)
かつて経験したことのない異常国会――悪法阻止へ最後まで頑張りぬく
国会の現状とたたかいの展望について、報告します。
今度の国会というのは、かつて経験したことのないような異常な国会となっています。
この間、憲法9条と「専守防衛」をかなぐりすてる敵基地攻撃能力保有と大軍拡の最初の一歩を踏み出す政府予算案が強行されました。
それに続いて、いま国会は悪い法律の団子状態です。
この間、難民・外国人の命を危険にさらす「入管法改悪案」、原発回帰への大転換を進める「原発推進等5法案」、健康保険証を廃止してマイナカードを強要する「マイナンバー法改定案」、軍需産業に国民の血税をつぎこむ「軍需産業支援法案」が、衆議院で次々と強行されました。いま参議院を舞台にして、論戦とたたかいが正念場となっています。
医療や年金の積立金などを流用し、「防衛力強化資金」という特別のプールをつくって軍拡の財源をねん出する「軍拡財源法案」が、昨日(19日)、衆院の委員会で強行されました。衆議院で最後まで頑張りますが、参議院でのたたかいが重要になってきます。
いまお話しした法案は、どれ一つとっても、日本の進路を大きく左右する文字通りの重大法案です。本来なら、2国会、3国会かけて、十分に時間をとって審議して、結論をだすような性格の内容です。それを、国民の声を聞かず、わずかな審議期間で次から次へと強行する。
この民主主義を蹂躙(じゅうりん)する暴挙に対して、みなさんと一緒に断固として抗議するとともに、すべての悪法を廃案に追い込むまで頑張ろうじゃないかということを訴えたいと思います。(拍手)
「悪政4党連合」によって、どんなにひどい事態が起こっているか
それではなぜ民主主義の危機というべき異常事態が起こっているのか。
まず岸田政権の強権姿勢があります。先ほど、市民連合の高田健さんから、「安倍政権が戦後最悪の政権だと思っていたら、“最悪の(なかでも)最悪の政権”が出てきた」というお話がありました。その通りだと思います。同時に、国会でつくられているきわめて危険な政党状況があるということを指摘しなければなりません。
敵基地攻撃能力保有と大軍拡にしても、先ほどの一連の悪法にしても、どれもこれもが、自民党・公明党・日本維新の会・国民民主党の「悪政4党連合」によって推進されています。
そのもとで、いま国会ではどんなにひどい事態が起こっているか。3点ほど報告したいと思います。
第一は、「入管法改悪案」をめぐる事態です。この間、維新の会の梅村みずほ参院議員が、「詐病の可能性」「ハンストで亡くなったのかもしれない」などの言葉を投げつけました。どれもが事実無根です。ウィシュマ・サンダマリさんを傷つけ、ご遺族を傷つけ、支援者を深く傷つける許し難い発言です。
これは一議員の問題にとどまらず、維新の会の党としての責任が深く問われています。参院本会議での梅村議員の発言は、維新の会を代表しての発言です。そして、維新の会の政調会長が「チェックした」と述べている発言です。まさにここには、この政党の人権に対する基本姿勢が示されているではありませんか。私は、維新の会に対して、党としての対応に誤りがあったことをはっきり認め、謝罪することを強く求めたいと思います。(拍手)
第二は、「軍拡財源法案」をめぐる動きです。この法案について、維新・国民は、法案には「反対」と言います。しかし実際には、与党の強行に手を貸す姿勢を取っています。この間、野党は、財務大臣の不信任決議案を提出しました。43兆円もの大軍拡の予算をつくっている張本人ですから、不信任をつきつけるのは当たり前です。にもかかわらず維新・国民は不信任決議案に反対し、野党に対して「昭和の戦術」を取っていると悪罵を投げつけてきました。維新・国民は与党の採決日程の提案に賛成し、廃案を求める野党の行動をののしり、この悪法についても強行に手を貸しています。
第三に、憲法審査会の動きであります。この間、維新・国民両党がけしかけるもとで、「悪政4党連合」によって、衆議院でも参議院でも憲法審査会の開催が常態化しています。
とくにその中で、緊急事態対応をめぐる議論が加速しているのはたいへん危険です。維新・国民・有志の会の3会派が、武力攻撃などが発生し、国政選挙が70日を超えて実施できない場合、議員任期を最大6カ月延長でき、再延長も可能とする改憲条文案をだしました。
これが憲法審で大問題になり、参考人として発言した早稲田大学の長谷部恭男教授は、次のように強く批判しました。
「任期を延長された衆院と従前の政権が長期にわたり居座り続ける緊急事態の恒久化を招きかねない」「本末転倒の議論」。このように警告されましたが、まさにその通りだと思います。
大逆流とキッパリ対決し、市民と野党の共闘の再構築を
こうして自民・公明・維新・国民の「悪政4党連合」によって、憲法と平和と民主主義を壊す大逆流がつくられています。
この大逆流とキッパリ対決して、大逆流を打ち破るために、市民と野党のしっかりとしたスクラムをつくっていくことが、今ほど求められている時はないと、訴えたいと思います。
先ほど、高田健さんから「市民と野党の共闘はさまざまな攻撃に直面し、困難がある。しかし、一緒に頑張っていこう」というエールをいただきました。私たちは共闘を諦めることは決していたしません。どうか力をあわせて、市民と野党の共闘を再構築し、この大逆流を打ち破って、希望ある新しい未来を開こうではありませんか。(拍手)
希望は国民のたたかいにある――未来ひらく新しいうねりが
それでは希望はどこにあるか。私は、希望は国民のたたかいにあると思います。
この間、さまざまな分野から、岸田政権と「悪政4党連合」の暴走に反対し、平和・民主主義・暮らしを守るたたかいの新たなうねりが起こっていることを、たいへん心強く思っています。
私は、5月1日のメーデーに参加しましたが、そこでも新しいたたかいの発展を実感しました。全労連のみなさんが「ストライキを構え、物価高騰を上回る大幅賃上げを」と呼びかけるなかで、昨年を上回る労働組合がストライキを決行したという話を聞きました。メーデーの会場でも、医療労働者のみなさん、非正規雇用労働者のみなさんが、勇気を持ってストライキに立ちあがったというスピーチが行われ、とても感動して聞きました。資本から独立したたたかう労働運動の出番だと、私はエールを送りたいと思います。
5月3日の憲法大集会に、2万5千人の方々が集まり、私も参加して、明るい熱気の広がりを実感しました。5月17日には、「大軍拡・大増税NO!連絡会」のみなさんから、13万3千人の請願署名が寄せられました。この運動が国民世論を変えつつあります。連休明けに発表された共同通信の調査によると、5年間で43兆円の大軍拡に対して、「適切でない」と答えた方が58%で多数になりました。いわゆる「防衛増税」については、「支持しない」と答えた方が80%と圧倒的多数です。国民の多数の声で、大軍拡を包囲し、止めるために全力をあげようではありませんか。
「入管法改悪案」反対の運動の広がりも目覚ましいものを感じます。12日には、幅広い団体・グループが主催した国会前集会に4000人が集まりました。全国各地でも抗議行動やデモが広がっています。特に若い方々、こうした行動に初めて参加する方々が、「これは私のことだ」「外国人の人権が尊重されない国は日本人の人権も危うくされる」―このように感じて、声をあげ、立ちあがっていることは本当に重要だと思います。
この問題では、野党が抜本的対案を提起するなかで、国会ではわが党の仁比聡平参院議員が質問し、山添拓参院議員が答弁する場面も生まれています。悪法の廃案のために、そして入管制度の抜本的改革のために力をつくそうではありませんか。
マイナンバーカード強要、保険証廃止反対のたたかいも大きな広がりを感じます。保団連など医療団体、運動団体が、「マイナンバー制度反対連絡会」を結成し、継続して運動に取り組んでいます。他人の個人情報のひもづけなど大問題が発覚しています。いよいよもってこれは危ない。こうした声が大きく広がっています。緊急署名が半年間で66万人をこえる賛同が集まっています。これも廃案に追い込むために頑張り抜こうではありませんか。
最後にもう一点、インボイス反対を求める運動が大きな広がりを示しています。全商連を先頭にしたさまざまな運動団体が「敷布団」となって、そこに声優、アニメーター、演劇などの文化関係者、フリーランス、個人事業主の方々が「掛け布団」として加わって、世論と運動が大きく広がっている。6月14日には国会前で「ストップ インボイス一揆」が計画されていると聞いています。10月実施を止めるために、ともに頑張りたいと思います。
さまざまな分野で、岸田政権と「悪政4党連合」の暴走に反対する新しい運動の広がりが起こっており、ここにこそ希望があると思います。
革新懇運動の頑張りどころ――解散・総選挙で新しい日本を
革新懇運動の何よりもの生命力・魅力は、国民の切実な願いと政治革新の「三つの目標」を結び付けて発展させることにあります。いままさに革新懇運動の文字通り頑張りどころ、革新懇運動の出番だと、確信を持って言いたいと思います。
さまざまな分野での国民運動を合流させて、岸田政権を追い詰め、解散・総選挙に追い込み、主権者・国民の審判をくだし、希望ある新しい日本をつくるために、ご一緒に奮闘する決意です。(拍手)